隠居生活

だいたいひとりでこじらせてます

真面目に書くキンプリ感想

巷で噂のKING OF PRISM、通称「キンプリ」を自分も観に行きました。

主な概要はこちらをご覧ください。

kinpri.com

前提として私はプリティーリズム・レインボーライブを見ていたので、オバレ(Over The Rainbow)の結成の過程や紆余曲折(という名の修羅場)もだいたい把握していました。でも時を経て自分の貧弱な脳みそがちょいちょい記憶を消していたため、若干の不安もありつつ、まあ頑張ればついていけるかな…?という程度の意識で観に行ったんです。

 

 

ここからちょっと注意書き

※かなり真面目な感じの感想文です。プリズムショーについての言及はほとんどしていません。プリズムショーについては本当に「見てくれ」としか言いようがない。

※その代わりストーリーや内容についてかなり言及している為、本当の意味でのネタバレのオンパレードなのでそういうのが嫌な人は気を付けて下さい。

 

 

 

 

結論としては最高の一言に尽きます。制作スタッフの執念を感じました。

じゃあどこら辺が最高なんだよということで、自分の思うココがヤバいというポイント集めてみました。

 

 

帰って来たOver The Rainbow

冒頭の笑顔でギターを弾きながら歌うコウジと、満足そうに歌うヒロとカヅキを見て元を取ったと思いました。本当に「帰って来たんだ…」とスクリーンを見ながら呆然としていました。最終回で3人の新たなスタートとして結成したオバレが、ステージで女の子たちを魅了しているという事実に既に胸がいっぱいでした。正直心を奪われていたシンくんの気持ちめちゃくちゃ分かる…

あの3人が一緒に日常を送っているということにまず脳処理が追いつかない…そして色気がおかしいことになってる…

自分の一番の懸念だった「だいぶん記憶あやふやになってるけど追いつけるんだろうか」という部分も、適所適所に的確に当時の諸々を思い出させてくれる回想を挟んでくるという完璧なまでの親切仕様によって見事に払拭されました。むしろ回想によって既に前半で瀕死状態でした。

 

一番キタのは神浜コウジにアメリカから映画音楽制作の巨額オファーが来た時に、エーデルローズの抱える巨額の負債を返すためにその仕事を引き受けた事。

一度は裏切りによって絶望し、音楽をつくることから遠ざかっていた神浜コウジがあんなに明るい歌を作れるようになって楽しそうにライブしてただけではなく、自分が生み出す音楽でみんなを護るという選択を取ったという重大さに震えました…コウジお前…ホント…最高かよ…。

 

劇中の回想でちょっとでもオバレに興味を持った方はぜひプリティーリズム・レインボーライブ(全51話)を見てほしい。後悔はさせません。

 

期待の新人・一条シン

プリズムショーという特殊な亜空間であるからこそなしえたETのアレを素でやり遂げたのを見た時、「なんかすごいやつが来た......ただものじゃねぇ……」と思いました。圧倒的な主人公力を見せつけられたぜ…。あとハーレム力が想像以上に強くてどっちかというと自分はそっちに笑いを禁じ得なかった。あいつプリズムショーで現エーデルローズ生を全員抱いたからな(残念ながら比喩じゃないです)。

 

バトンを渡すと言うこと

一条シンに神浜コウジのプリズムショーを愛し、プリズムの輝きに心奪われ編入にまで至ったという道を歩ませてから、終盤で「神浜コウジの意志と覚悟を継いでステージに立つ一条シン」を描く流れが本当に神がかっていて、終始脳内からアドレナリンが放出されていました。ここで重要なのは一条シンが神浜コウジの代役として立ったのではなく、「神浜コウジの意志と覚悟を引き継いだ一条シン自身がステージに立ってショーを見せた」ということなんですよね。

 

そしてこの流れが俗にいう世代交代を意味するのではないかと思った時、あまりの自然さに呆然としました。リアルに力が抜けて上映が終わった後もしばらく立てませんでした。

 

どのジャンルでも絶対というほど荒れる世代交代。(自分もヴァンガードシリーズを追いかけてる身ですけど世代交代のときはまあ荒れました…)古傷を負っている人も多いのではないでしょうか…。そのバトンを渡す作業を劇場版で、1時間という中で成し遂げていたキンプリって何…?天才の所業か…?

 

プリズムショーは言ってしまえばエンターテイメント性とプリズムの煌めき(と勢い)がほぼ全てなのですが、シンくんにバトンを渡す前にがっつりとオバレや周囲の葛藤や現状を見せてくれたことが、自分の脳内がすんなり受け入れた理由かなと思います。

世代交代をしたどこのジャンルでも必ず一回は見た「前世代の後日談や世代交代に至るまでの経緯を一時間だけでもいいから見せてほしい」という言葉を文字通りそのまんま具現化したのがキンプリなんですよね。オバレ結成後の3人の日常を見せつつ、取り巻く環境によって葛藤する姿を見せ、そして自分たちの力の及ばない所は新人という名の次世代に託す。バトンの受け渡しが綺麗な流れすぎて言葉がないです。

 

前世代と次世代が共に何かを乗り越えてバトンを繋いでいく展開、世代交代の役目を果たすために映画というメディアを活用する手法はもっと流行っていいと思います。映画館という特殊空間と限られた上映時間というのはむしろそういう特殊な展開をするのにはうってつけではないでしょうか。

 

ハリウッド行きの電車に乗って星座になった

Twitterなどでもよく流れて来たこのシーン。まあ文字通り「ハリウッド行きの電車に乗って星座になる」んですけれど、他のプリズムショーはエンターテイメント性に溢れていて頭空っぽにしても楽しめるのに対して、このシーンだけはギャグではないと声を大にして言いたい。オバレの無期限休止を締めくくるプリズムショーは本当に大真面目でした。

なぜそう言うのかというと、これは自分が映画館から帰宅して勢いのままにRLを再生していて気付いたんですけど、あのシーンが45話のオマージュだったからです。

 

45話って何?と思われる方も多いと思うので簡単に説明すると、今までは心を殺し自分自身を嘘で塗り固めてステージに立っていた速水ヒロが、様々な人と交流することで自身の今までの行いを悔いるようになり、ステージ上で自身の過去や思いすべてを暴露して、以前にコウジを傷付けてしまったことも謝罪し、その上でショーを披露することで本当の「速水ヒロ」として再出発した神回です。(詳細はググってもらえると嬉しい。実際に見てもらえるともっと嬉しい。)

 

 

で、問題の45話のプリズムショーの様子がこちら↓

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キンプリを見た方は分かると思うんですけど本当に演出がほぼ一緒なんです

 

速水ヒロが本当の意味で出発したステージと、神浜コウジがみんなを護る為に出発したステージの演出を意図的に似せてくるというこの…「出発」を意味するステージの演出が同じなの狡すぎるでしょ………数年の時を経て過去の演出と被せてくる展開で脳汁分泌しまくりました…。

 

そして本当にすごいと思うのは、この出発の意味を持つステージが純粋に頭空っぽにして楽しめるプリズムショーの間に挟まれている効果によって、初見の人にもなんか頭おかしい電子ドラッグみたいなシーンとして受け入れられているところだと思います。

普通は話数を踏んだ上でのこのような過去を踏まえた演出は初見の人はだいたい置いてけぼりを喰らうと思うんですけど、他のプリズムショーがぶっとんでいるせいで、いい意味で隠れてるんですよね…。むしろ初見の人が率先して「ハリウッド行きの電車に乗って星座になったシーンやばかった」と言えるのは真面目にすごいことだと思います。

 

そして更にプリリズ踏まえてる人にはそれがどういう意味を指しているのか分かってしまうこの巧妙な隙のない二段構え。なんなんだよこれ…なんだよこのトリック…45話を再生してもう脱力しました…魂抜けたよ…

 

プリズムショーは全体的にぶっとんでたけど、次の主人公へとバトンが渡される前のコウジを見送る時のプリズムショーは、ぶっとんではいたけど意味のある演出だったな…と改めて思って、本当に力の抜き方・入れ方が計算されてるんだな…と。巧妙すぎる。監督や脚本家の頭の中どうなってるの…。

 

(追記:お恥ずかしながら落ち着いてまたRLを見返したところ、一条シンの初めてとなるプリズムショーのシーンにもオマージュが隠されているのに気づきました。詳しくはレインボーライブを見て下さい。綾瀬なる達の回想の映像に乗せてシンくんにあの主張をさせる演出本当にずるいわ。)

 

「キンプリはいいぞ」

よく見かける「キンプリはいいぞ」という呟き。(正直うんざりしている人もいるのではないかな?笑)自分も観る前は何でそんなに多いんだろうかと不思議に思ってたんですけど、実際に観て分かりました。上でもちょっと書いてるんですが、キンプリは初見だろうが古参だろうが関係なく様々な視点で純粋に楽しめる作品だからです。

 

そもそもキンプリは「プリティーリズム・レインボーライブのスピンオフ」という位置づけの作品なのですが、実際に行かれてる方は初見の人が多いのが最初すごく意外でした。だって普通スピンオフって本編見てたか興味ある人くらいしか行かないでしょ。ぶっちゃけ。

 

で、自分が実際に映画館に行って終わった後に、隣に座ってたお姉さんが「プリズムショーヤバいね!!」って言ってたのが目から鱗だったんです。自分はオバレなどの登場人物の諸々に魂吸い取られていたけど、プリズムショーそのものを楽しみにされてる方が多いんだということをその時に初めて実感しました。

でもそれも制作者の意図するところなのかなと思ったり。キンプリのプリズムショーはかなりエンターテイメントに特化してて、プリズムショー一つで既に純粋な作品として完成されているんですよね。それは初見の人もプリズムショーを楽しめるようにという意図もあるのかなと思います。プリズムショーをそれでも見慣れているはずの自分でも例の蜂蜜のシーンはマジかよ…と思ったもん。(隣のお姉さんはショー中ずっと笑いをこらえてたので振動が伝わってちょっとしたマッサージチェア気分を味わえました。)

 

どうやって楽しむかは本当に自分次第、プリズムショーを純粋に楽しむもよし、キャラたちに思いを馳せても良し、応援上映でサイリウム振るもよし、事前情報のない全くの初見の人でも、プリリズを以前見ていた人も関係なく「キンプリはいいぞ」と言えるというのは本当にすごい。私はもしかしなくてもとんでもない作品を観に行ったのでは…?と帰宅しながらじわじわと感じました。

 

 

今回の映画制作は興行的に崖っぷちの中で、それでも監督をはじめとしたスタッフの愛情によって成立した映画だと聞きました。そして情熱がこれでもかというほどに注がれ、作品の完成度がスタッフの熱意に反映されているという奇跡のアニメでした。キンプリありがとう。

 

そして続編を強く希望します!!!

 

 

お粗末様でした。